小型客船・呼子丸が嵐のなか尾道沖で遭難し、乗客9名全員の絶望が伝えられてから三ケ月 残された恋人、夫、妻、家族のもとに、「今夜午前0時、呼子浜で待っている」という不可解なメッセージが次々と届く 女子高生・朝倉恵(宝生舞)は、授業中見ていたスライドのスクリーン上に恋人・高柳淳(柏原収史)からのメッセージを見つけた 恵は淳と交わした「ずっと一緒にいよう」という約束を思い出す 本当に会えるかもしれないという期待と不安を胸に、恵は呼子浜へ急ぐのだった ヤクザの親分・金澤弥一郎(植木等)のもとには、孫からの手紙が届いていた 長年に渡って一家の長としてのつとめを果たしてきた金澤は、跡目を若い衆に譲って静かな余生を送りたいと考えていた 彼は組の若いものを引き連れて呼子浜へと出かけて行く 造船設計技師・永尾要治(峰岸徹)は、携帯パソコンに映し出された妻と娘からのメッセージを読んでいた 残酷ないたずらだと、堪えられない気持ちを部下の直子に訴えるが、永尾に思いを寄せる直子は、信じて会いに行くように促すのだった 永尾は直子の運転する車で呼子浜を目指した 水泳部員の安田沙由利(椎名ルミ)は、会社の伝言板に唐木コーチからのメモを見つけた 伝えられなかった唐木への思いを伝えたい一心で、沙由利は呼子浜へ行くことを決意する しかし、同僚でマネージャーの小沢小百合(洞口依子)も同じメモを見ていたのだった 森下美津子(多岐川裕美)は、夢の中で夫の声を聞いた 美津子はそれを、夫の社長秘書として仕えていた布子(根岸季衣)に楽しそうに話す 布子は固い表情をしたまま、その話を聞く 会社のボートで二人は夕日の尾道水道を進んでいく 女子大生・原田法子(高橋かおり)は、友人の綿貫ルミと温泉旅行に来ていたのだが、法子の勘違いで最終便の船に間に合わなくなり、この夜を呼子浜の待合所で過ごすことになってしまった 待合所で早々と寝入ってしまった法子とルミのもとに、金澤たちの一行が到着した 供をして来た子分のなかに、小学校の時に離れ離れになってしまった大木貢(林泰文)がいるのを見て、法子は驚く 法子はあの時にもらった貢からの手紙に書いてあった“約束をまだ覚えていたのだった 貢は複雑な家の事情で、金澤に拾われヤクザの見習いをやっていた そこへ、朝倉恵が自転車で駆けつけて来る 続いて、死者たちとの“約束を信じて、ひとり、またひとりと桟橋の待合所には人が集まって来た それぞれの想いと思惑が交錯するなか、“約束の時間は近づいていた 午前0時になり、波がにわかに騒ぎ始めると、暗い海の中から真っ白な呼子丸が姿を現わし、桟橋に停止した その瞬間、目の前に現れたのは死んだはずのあの人たちだった “約束とは最愛の人に言えなかった“さようならを言うことなのだ つかの間の再会を終えた死者たちは、再び船に乗り込んでいく しかし、金澤だけは自分の命と引き換えに、孫の身代わりとなって船に乗るのだった 彼らを乗せた呼子丸は、暗い尾道の海に消えていった